成年後見制度とは-相続人が認知症の場合の相続手続
相続人が認知症で判断能力がないとされた場合、相続はどうやって進めればいいのでしょうか。
民法上には、判断能力のない者を保護する制度として、成年後見という制度があります。
相続において成年後見制度を利用することで、相続手続きをすすめることができます。
ここではその成年後見制度について、相続に関係する範囲でわかりやすく解説していきます。
当事務所では相続問題の経験が豊富な男女4人の弁護士が、チームを組んで事務所全体で問題を解決します。
相続人が認知症等である場合、遺産分割協議には成年後見人の参加が必要になります。
相続問題を多数解決してきた当事務所には、成年後見について十分な知識と経験があります。
どうぞお気軽に私ども相続の専門家にご相談ください。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、広い意味では「自分の行為の結果を認識して、物事を判断するための判断能力が低い人」を保護するための制度です。
成年被後見人 | 被保佐人 | 被補助人 | |
---|---|---|---|
事理弁識能力 | 常に欠けている | 著しく不十分 | 不十分 |
後見人 | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 |
判断能力の程度により「成年被後見人」「保佐人」「被補助人」の3類型に分かれています。
それぞれ後見人として、成年後見人、保佐人、補助人がつきます。
この後見人が代理する、あるいは補佐することによって、成年後見人等も必要な法的手続きについて行えるようになっています。
以後は今回のテーマである「認知症などで判断能力がない者が相続人」に適用される「成年後見制度」について解説します。
成年後見制度(法定後見と任意後見)
成年後見制度は大きく「法定後見」と「任意後見」の2つに分けられます。
【成年後見制度】
- 法定後見:判断能力がなくなった後に行う手続
- 任意後見(契約):判断能力がなくなる前に、それに備えてする契約
法定後見
法定後見は、民法に基づいて行われるものをいいます。
本人の判断能力がないと判断される場合に、配偶者や親族等が家庭裁判所に申立てます。
家庭裁判所の審判で後見が開始され、後見人が選任されます。
本人の判断能力がなくなった後に行う手続きです。
任意後見
任意後見は、将来の自分の後見人の候補者を、本人が前もって決めておく方法です。
本人と後見人候補者(任意後見受任者といいます)との間で、公正証書によって契約してします。
のちに、本人の判断能力が不十分となった段階で、親族や任意後見受任者が、家庭裁判所に後見監督人を監督する「任意後見監督人」の選任を申し立てます。
この申し立てにより後見監督人が選任されれば、任意後見契約に基づき任意後見が開始されます。
本人の判断能力がなくなる前に行う手続きです。
相続人の一人に判断能力がない場合
相続人に判断能力がない場合、遺産分割協議に注意が必要です。
遺産分割協議
遺産分割協議は相続人全員が参加した上、全員の合意が必要です。
相続人の1人が認知症で判断能力がないからといって、その参加を省略することはできません。
この場合、以下の方法で遺産分割協議をおこないます。
- 判断能力のない相続人について、成年後見の開始を家庭裁判所に申し立てて後見人を選任してもらい、その後見人に遺産分割協議に参加してもらう
- 判断能力のない相続人にすでに任意後見契約が開始している任意後見人がいれば、その任意後見人に遺産分割協議に参加してもらう
ただし②の場合で、任意後見人が相続人でもある場合は利益相反行為となります。
したがって後見監督人が本人の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
後見人選任の手続き
後見開始を家庭裁判所に申し立て、後見人を選任してもらいます。
具体的には以下の通りです。
申立人
本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官
申し立てをする先
被成年後見人の住民票所在地の家庭裁判所
申立て費用
- 収入印紙(申立書貼付分800円、登記手数料分2600円)、郵便切手4000円程度(裁判所ごとに違いがあります)
- 鑑定費用10万円(必要ないケースもあります)
提出書類
- 申立書(後見開始申立書)
- 申立書付票
- 親族関係図
- 後見人等候補者身上書(成年後見人の候補者を提示)
- 本人の財産目録およびその資料
(不動産についての資料、預貯金や株式等についての資料、生命保険や損害保険等についての資料、負債についての資料、収入についての資料、支出についての資料) - 本人の収支予定表
- 本人の戸籍謄本と、住民票または戸籍附票
- 後見人候補者の住民票または附票
- 本人について成年後見等の登記が既にされていないことの証明書(東京法務局にて取得)
- 診断書(主治医等が作成)、本人情報シート(医師による診断書の作成支援のため、ソーシャルワーカーが作成するもの)
- 本人の健康状態が分かる資料(精神障碍者手帳、身体障害者手帳等)
本人が自分の判断能力がなくなるのに備える場合
これまでは相続人が認知症となっている場合を解説しましたが、将来的に自分が認知症となる場合を想定して任意後見をしておくこともできます。
その場合のメリットは、主に以下の2つです。
① 後見人を自分で選べる
法定後見では家庭裁判所が後見人を選任します(候補者の提示はできますが、最終決定はあくまで裁判所次第です)。
しかし任意後見であれば、信頼のできる弁護士等、自分で選ぶことができます。
② 後見の内容を自分で決めておける
法定後見では後見人のする職務は法律上決まっています。
しかし任意後見であれは、契約ですので後見の内容を自分で定めることができます。
まとめ
相続人の1人が認知症の場合、遺産分割協議は特別の手続きを経る必要があります。
相続問題を数多く取り扱ってきた当事務所へどうぞご相談下さい。
当事務所は相続問題に詳しい男女合計4人の弁護士が、チームとなって相続問題に取り組みます。
相続人が認知症である場合の後見だけでなく、自分が認知症となる前の任意後見についての相談も数多く対応した経験があります。
気軽に相談していただけるよう、夜9時まで電話を受け付けています。
またわかりやすく費用を設定しており、支払い方法も個々の状況に合わせ柔軟に対応します。
初回相談は60分まで無料ですので、どうぞ気軽に当事務所までご相談ください。