遺産の使い込み-その対策とは-
やっとの思いで四十九日の法要を終え、ひと息つく間もなく相続について話し合う段階で、相続財産が思ったより少なくなっていたということはよくあります。
亡くなった人(被相続人)の治療費や介護費用といった正当な支出であれば問題ないのですが、意外に被相続人に近い人が自身のことで使い込みをすることは少なくありません。
今回の記事では遺産が使い込まれていた場合の問題点と対処方法等について、わかりやすく解説していきます。
当事務所では相続問題解決の経験を十分持った男女4人の弁護士が、一丸となってあなたの問題に向き合います。当事務所の大きな特徴です。
時間が経てば経つほど証拠を発見しにくくなって、使い込みを証明することが難しくなります。
少しでも心配事があれば、すこしでも早く私ども相続の専門家にご相談ください。
遺産の使い込みとは
遺産の使い込みとは、被相続人(亡くなった人)の財産を遺産分割する前に勝手に自分のものにしたり処分したりすることです。
亡くなる前や亡くなった後でも当てはまります。
使い込む者は相続人の一人であったり、赤の他人だったりする場合もあります。
遺産分割前に遺産が使い込まれれば、それだけ相続財産全体が少なくなるので相続人にとって不利益となります。
とくに相続人の一人が遺産を使い込んだ場合、その相続人は遺産分割する前に使い込んだ分に合わせて遺産分割した後の相続財産を手にすることになり、著しく不公平となります。
実際そのようなケースでは、多くの場合使い込んだ相続人と他の相続人の間で激しい争いとなります。
使い込みの具体例
主な使い込みの具体例は以下の通りです。
預貯金の使い込み
一番多い例です。
生前から被相続人の口座から預金を引き出し、自分のものとして使い込むケースです。
ただし、生前の被相続人本人の指示によるものや入院費のためなどの正当な引出としっかり区別する必要があります。
株式などの有価証券の売却
被相続人の指示なしにおこない売却代金を勝手に引き出し自分のものとすれば、使い込みとなります。
生命保険等の解約
被相続人が契約者の場合で勝手に解約し、解約で得られる返戻金を勝手に自分のものにすることも使い込みです。
不動産の処分
被相続人の意思に反し、実印を勝手に使って売買契約をおこない代金を自分のものにすることも使い込みとなります。
遺産の使い込みと遺産分割調停との関係
相続問題の解決といえば、通常は遺産分割調停になります。
しかし、遺産の使い込みのケースではこの遺産分割調停の制度は利用できません。
なぜなら、遺産分割調停はその言葉の中に「分割」とあるように、あくまで分割の方法を話し合う制度です。
しかし、使い込みの場合、遺産そのものの範囲が変わってしまうので、まず遺産の範囲を確定することが必要になります。
したがって遺産の使い込み問題に遺産分割調停は利用できず、別の対処法をとることになります。
弁護士による対処法
使い込みに対する対処は容易ではありません。
使い込みを指摘しても本人は「あれは被相続人のために引き出した」「世話をするのにそれ以上かかっている」などと主張することがほとんどです。
すぐに解決することはほとんどないといっていいでしょう。
専門家である弁護士が対処する場合は、以下のいずれかの方法によります。
- 不当利得返還請求
- 不法行為に基づく損害賠償請求
以下、この2つの方法について説明します。
不当利得返還請求
不当利得返還請求とは(民法703条)、
・「正当な権利なく利得(財産など)を得た人」に対して、
・「損失を受けた人」が
・「その利得を返すよう求める権利」
をいいます。
遺産の使い込みのケースで言い換えれば次のようになります。
・遺産分割協議で相続が確定する前に(正当な権利がないのに)被相続人の財産を自分のものにした人(利得を得た人)に対して、
・損失を受けた他の相続人が
・預金を返すよう求める権利のことです。
この権利に基づき、使い込みをした者に対し、使い込んだ分を返すように請求します。
直接交渉で相手が返そうとしなければ、訴訟へ進めることが考えられます。
不法行為に基づく損害賠償請求
不法行為に基づく損害賠償請求とは(民法709条)、
・ある人が故意や過失によりおこなった違法行為により
・他者に損害を発生させた場合
・損害を受けた人が違法行為をした人に損害賠償請求をすることです。
遺産の使い込みのケースで言い換えれば次のようになります。
・遺産分割協議で相続が確定する前に被相続人の預金を引き出し自分のものにしたという(違法)行為により
・その不法行為により他の相続人が損害を受けた場合
・損害を受けた他の相続人が損害賠償として引き出した預金の額を請求する権利のことです。
これも直接交渉に応じなければ、訴訟へ進むことが考えられます。
不当利得返還請求と損害賠償請求の時効
上記のような法的な請求をするには、次の2種類のいずれか期間内におこなう必要があります。
その期間を過ぎると、時効により権利が消滅し、請求できなくなります。
不当利得返還請求
不当利得を得た行為の時から10年以内。
不法行為に基づく損害賠償請求
不法行為による損害の発生と加害者を知ってから3年以内。
まとめ
遺産が使い込まれていることを証明し、取り戻すには高度な法的知識と訴訟技術が必要です。
時間が経てば証拠がなくなる恐れもありますので、使い込みを疑うようなことがあればできるだけ早く、相続問題の解決経験を数多く持つ当事務所へのご相談をお勧めします。
当事務所は相続問題に詳しい男女合計4人の弁護士が、全員であなたの相続問題に取り組みます。
豊富な知識と裁判例や裁判官の考えの傾向にも配慮した交渉をおこなって、あなたの権利を守ります。
気軽に相談していただけるよう、夜9時まで電話を受け付けています。
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初回相談は60分まで無料ですので、どうぞ気軽に当事務所までご相談ください。