相続争いとなる典型的ケース5つとその対処法

代表弁護士 関口 久美子 (せきぐち くみこ)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号43125)
保有資格 / 弁護士

相続では家族・親族間で大きな財産のやりとりをしますので、別名「争族」といわれてしまうほど、相続人間のトラブルが発生しやすいものでもあります。

それでは、相続争いにはどのようなケースがあり、そのようなトラブルを避けるにはどのように対処すればよいのでしょうか。

この記事では、相続争いの典型的ケース5つとその対処法についてご説明します。

相続争いの典型的ケースにはどのようなものがあるか

相続財産が不動産だったときのトラブル

土地や自宅などの不動産の相続は、可分の資産である現金などとは違い、複数の相続人間で簡単に分割して分けることができない資産であり、価値が高いものも多いケースがある一方で最近では価値がなく需要のない不動産も増えており相続人全員が誰ももらいたくないケースもあるなど、誰が相続するのかなど相続トラブルの原因になりやすいものといえます。

不動産を複数人で分ける方法としては、不動産を物理的にわける「現物分割」、不動産を売却して換金したうえでお金の形で分割する「換価分割」、不動産を一人の相続人が単独で相続したうえで、他の相続人に金銭を支払う「代償分割」の3つの方法があります。

分割方法を巡って、例えば、被相続人である親と自宅に同居していた相続人がいる場合に、自宅の売却をしなければならないのか、代償金を払うとして不動産の価値はどのように評価するのか等で揉める可能性があります。

遺留分を巡ってのトラブル

遺言により法定相続分通りの相続が行われなかった場合に、少なくしかもらえなかった遺留分権利者から遺留分侵害額請求をされるというトラブルの可能性が考えられます。

遺留分とは、法律上、一定の範囲の法定相続人について保証される最低限の遺産相続分のことです。遺留分は遺言の内容に反していても保証されますので、遺留分権者は、遺留分を侵害して多く相続した相続人に対して遺留分侵害額請求をすることにより、遺留分を取り戻すことができます。

例えば、相続人である子が3人いた場合に、被相続人にとって生前折り合いがよかった末子にだけすべて相続させる旨の遺言を遺した場合、長子や次子は侵害された遺留分を末子に請求できることとなります。この権利は相続法改正によって金銭請求へと法的性質が変化しています(2019年7月1日施行)。

寄与分についてのトラブル

相続人の中のひとりが被相続人と同居して介護をして生活を支えてきたという場合には、その相続人には寄与分という遺産分割にあたって相続分の増額が認められる可能性があります。

民法904条の2は、被相続人の事業を手伝ったり療養介護を行ったりするなどにより、生前に財産の維持や増加に貢献した相続人に寄与分を認めています。

また、2019年の相続法改正により、相続人以外の親族、例えば子供の配偶者である嫁などが、無償で被相続人の療養看護等を行った場合にも特別寄与料が請求できるようになりました。

寄与分は法律で数字や割合が決まっているわけではないので、寄与の度合いや具体的な増額の割合をめぐって、また介護をしてきた相続人や介護に参加させてもらえなかったと考える他の相続人の感情をめぐって、争いになることも少なくありません。

前の配偶者との間に子供がいる場合

例えば、被相続人が離婚・再婚をしており、前妻との間に子どもがいる場合には、この子供も法定相続人になります。離婚によって夫婦関係は解消されますが、夫婦の間に生まれた子供との法的な親子関係には影響しないからです。

しかしながら、離婚後面会交流などをしていない場合、被相続人と前妻の家族とは疎遠になってしまっていることもよくあります。特に被相続人の後妻との間にも子供がいる場合、子供同士は関係性が希薄であることも多く、遺産分割協議で意見があわずに揉めてしまうこともあります。

生前に相続人による使い込みがある場合

被相続人と同居していた相続人が、勝手に被相続財産から使い込みをしていたのではないかと疑われてトラブルになることもあります。

被相続人の死亡後に開示された遺産(特に預貯金)が想像よりも少なかった場合に、開示された相続人が疑心暗鬼になってしまい、話がこじれることもあります。

同居していた相続人としては、お金の用途が介護費など被相続人の身の回りの世話のためであったことを他の相続人に証明できるように、日ごろからレシートの管理などをしておくことが望ましいでしょう。

また、生前に被相続人から委任を受けて財産管理をしていたことを裏付けるために生前の財産管理につき契約書を締結するなど書面化しておくことが重要でしょう。

また、仮に実際に、相続人が私用で使い込んでいた場合には、相続分からその分を差し引くなどの話し合いをしましょう。

相続争いを避けるための対処法

上述のような相続トラブルにならないように、被相続人としてはどのような対策をしておくべきなのでしょうか。

生前から家族とコミュニケーションをとること

まず、被相続人が健康で認知症のリスクなどもないうちから、家族で遺産相続をどのようにするかよく話し合っておくことが大切です。誰にどのように相続させたいかという被相続人の思いや相続人となる家族それぞれの言い分をすりあわせておくと、いざ相続となったときにトラブルとなる可能性を減らすことができます。

あわせて、被相続人は、相続発生時に相続人が困らないように、どのような財産がどれくらいあるかについて整理し、財産目録をつくっておきましょう。

遺言書を作成する

遺言書を作成しておくことにより、基本的には、被相続人が希望するように財産を相続させることができますので、相続発生時のトラブル回避につながります。

例えば、不動産の相続については、あらかじめ誰に相続させるか、代償として他の相続人に何を相続させるかなどを遺言書によって定めておけばトラブルになる可能性を減らすことができます。

また、寄与分がある場合や前妻との子がいる場合についてもあらかじめ取り決めをしておくことができます。遺言書を作成する際の留意点としては、遺言書の内容が偏りすぎて遺留分を侵害してしまうと、遺留分を巡って争いになる可能性がありますので、遺留分にも配慮した内容とする必要があります。

もし仮に遺留分に配慮できない事情がある場合には付言事項でその理由や、被相続人としての思い(死後の争いを望まないこと、遺留分侵害額請求をしないでほしいこと等)。

遺言は公証役場で作成する公正証書遺言が後日トラブルになった際でも信用性が高くお勧めですが、この作成が難しい場合には、相続法改正により自筆証書遺言を法務局で保管できる自筆証書遺言書保管制度が創設されましたので(自筆証書遺言につき、死後に家庭裁判所で行う検認という手続きが不要になります)、この制度の利用も検討しましょう(2020年7月10日施行)。

また、有効な遺言書を作成するためには、法律上様式が定められていますので、作成時には弁護士等の専門家に相談すると安心です。

最後に

いかがでしたでしょうか。

相続争いになってしまう典型的ケース5つと、それらのトラブル未然に防ぐための対処方法についてご説明しました。ご参考になれば幸いです。

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