相続回復請求権―相続人なのに無視された場合の対処―

代表弁護士 関口 久美子 (せきぐち くみこ)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号43125)
保有資格 / 弁護士

本当は相続人なのに、知らないうちに勝手に遺産分割が行われていた場合はどうすればいいのでしょうか。

相続人には本来あるべき相続権を回復するための権利(相続回復請求権)が認められています。

今回の記事ではその相続回復請求について、わかりやすく解説していきます。

当事務所では相続問題解決の経験を十分持った男女4人の弁護士が、一丸となってあなたの問題に向き合います。

相続回復請求権には時効があり、定められた期間を過ぎると請求できなくなってしまいます。

少しでも心配事があれば、一刻も早く私ども相続の専門家にお気軽にご相談ください。

相続回復請求権とは

相続回復請求権は、民法884条に規定があります。

それによると、相続回復請求権とは以下の通りです。

相続回復請求権とは、以下の期間内に請求しなければ時効により消滅する。

  1. 相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないとき
  2. 相続開始の時から20年を経過したとき

しかし、どうやって請求するのか、いくら請求できるのかといった、相続回復請求権そのものの具体的な内容については規定されていません。

そのため、そうした具体的な内容は、民法の解釈や判例に委ねられています。

現在では、一般的に以下の通りとされています。

①相続回復請求権を行使できる人
本来相続権を持つのに、相続権が侵害されている人(真正相続人といいます)

②相続回復請求の相手方(相続回復を請求できる相手)

  • 表見相続人:相続権がないのに相続財産を占有している(持っている)人
  • 他の共同相続人:他の共同相続人で、相続権があっても本来の相続分を越えて相続財産を占有している人

③請求できる内容
本来の相続権の回復を求める(名義の変更と明け渡し)

例:共同相続人の一人が他の共同相続人を否定し自己の単独所有とした不動産を、他の真正共同相続人が取り戻すケース

それでは以下、相続回復請求権について、以下の項目に分けて具体的に説明します。

  1. 相続回復請求できる人
  2. 相続回復請求の相手方
  3. 相続回復請求の時効

相続回復請求ができる人

相続回復請求できるのは、真正に相続権がある人(真正相続人)です。

そのほか、以下の人も相続回復請求ができます。

  • 真正相続人の相続人
  • 相続人以外の包括承継人
    (権利義務を一括して引き継ぐ人のこと、包括受遺者相続分の譲受人、遺言執行者や相続財産管理人など)

逆に、相続回復請求ができない人「相続財産のうち一部のみを譲り受けた人(特定承継人といいます)」です。

相続権という一括した地位を引き継いだ人しか相続回復請求をおこなえないからです。

相続回復請求の相手方

次に、相続回復請求の相手方です。

ただしこのことについて、民法884条には具体的な内容が規定されていません。

しかし、民法の解釈や判例で、現在以下の人たちが相続回復請求の相手方になるとされています。

表見相続人

相続人ではないのにもかかわらず、一見、相続人として資格があるようにみえる者をいいます。

具体的には以下の通りです。

  1. 相続資格を喪失した人(相続欠格者※1、または相続を廃除された者※2)
    ※1相続欠格者(民法891条)
    被相続人や相続人を殺害したり殺害しようしたりして刑を受けるなどして法律上当然に相続人の資格がはく奪された者
    ※2 相続を廃除された者(民法892条)
    被相続人に対する虐待や重大な侮辱、著しい非行を理由として、家庭裁判所の審査を経て相続の権利を奪われた者
  2. 無効な遺言により遺産を相続した者
  3. 偽りの出生届や認知により被相続人の子となった者
  4. 有効でない養子縁組により被相続人の養子となった者

他の共同相続人

他の共同相続人が本来の相続持分を超えて、相続財産を所有している者のことです。

民法には規定がありませんが、昭和53年12月20日の最高裁判決により認められるようになりました。

前述した表見相続人は本来真正な相続人ではありません。

これに対して、このケースは真正な相続人ではあるのです。

真正相続人であるけれども、本来の相続持分を超えて相続していることで相続回復請求の相手方となることがポイントです。

今では相続回復請求といえば、こちらを指すことの方が多くなっています。

ただし、相続回復の請求をするためには条件があるので、注意が必要です。

相続回復の相手方にできる共同相続人は、善意無過失(真正相続人の相続権を侵害しているとの認識がなく、認識がないことに過失がない)である場合のみとされています。

共同相続人が悪意(真正相続人の相続権を侵害していると知っている)の場合は、時効(後述します)がある相続回復請求権より、時効のない遺産分割によって解決する方が、救済範囲が広いからです。

相続回復請求権の時効

相続回復請求するには、次の2つのいずれかの期間内にする必要があります(民法884条)。

この期間を超えると、相続回復請求権が消滅し、請求できなくなります。

行使しないと権利が消滅することを「消滅時効」といいます。

5年時効

相続人又はその法定代理人が、自分の相続権を侵害された事実を知った時から5年間以内

20年時効

相続開始の時から20年以内

まとめ

遺産分割が勝手にすすめられて知らないうちに相続が終了していても、正当な遺産の持分が取り戻せるケースがあります。

そのようなケースが判明した場合には一刻も早く、相続問題で豊富な経験を持つ当事務所へのご相談をお勧めします。

当事務所は相続問題に精通した男女合計4人の弁護士が全体でチームを組み、あなたの相続問題を解決します。

遺族の方々の感情のもつれを解きほぐし、可能な限り多くの方が納得できる解決を目指します。

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