遺産の最低限の取り分、遺留分とは―その割合と計算方法について―

代表弁護士 関口 久美子 (せきぐち くみこ)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号43125)
保有資格 / 弁護士

一部の相続人には、最低限の取り分である「遺留分」が認められています。

その遺留分の割合は、どのような計算で求められるのでしょうか。

今回の記事ではその遺留分の割合と計算方法について、わかりやすく解説していきます。

当事務所では相続問題を数多く解決してきた男女4人の弁護士が、それぞれに意見を出し合い問題を全体で解決します。

遺留分を求めることは最低限の権利です。

少しでも疑問があれば相手の言い分をうのみにせず、気軽に私ども相続の専門家にご相談ください。

遺留分とは

遺留分とは、相続人に認められている最低限の遺産の取り分のことです(民法1028条)。

相続人でない人には遺留分はありません。

遺留分を持つ相続人

民法上、遺留分がある可能性がある相続人とは、以下の人たちです。

  • 配偶者
  • 子(および子の代襲相続人)
  • 直系尊属(被相続人の親)

ただし、

  • 直系尊属は、相続順位によってはそもそも相続人とはならず、遺留分もありません。
  • 亡くなった人(被相続人)の兄弟姉妹は、相続人ではありますが遺留分はありません。

遺留分は、被相続人の遺言によってもなくすことはできません。

遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求によって侵害された額だけ金銭的な補償を請求することができます。

遺留分の割合

遺留分の割合(相続財産全体における遺留分の総額)は以下の通りです。

  • 配偶者や直系卑属(子や孫)の場合、相続財産全体の2分の1
  • 相続人が父母のみの場合、相続財産全体の3分の1

【具体例1】相続人が配偶者と子2人の場合
遺留分の総額は相続財産全体の2分の1になります。

その2分の1を配偶者と子2人で法定相続割合に従って分け合います。

したがって遺留分は以下の通りになります。

相続人 遺留分
配偶者 相続財産の2分の1(遺留分の総額)×2分の1(配偶者の相続割合)=4分の1
相続財産の2分の1(遺留分の総額)×2分の1(子の相続割合)÷2(人数で割る)
=一人当たり8分の1

【具体例2】相続人が父母2名だけの場合
遺留分の総額は相続財産全体の3分の1です。

父母それぞれの遺留分は以下の通りになります。

相続財産の3分の1(遺留分の総額)÷2(人数で割る)=6分の1

遺留分の計算方法

実際の遺留分と遺留分侵害額は、次の順番で計算します。

  1. 遺留分の基礎となる財産の算定
  2. 遺留分の割合の算定
  3. 遺留分額の算定
  4. 遺留分侵害額の算定

以下、それぞれ詳しく説明します。

(1) 遺留分の基礎となる財産の算定

最初に「遺留分の基礎となる財産」を以下の式で算定します。

相続開始時の積極財産※1+生前贈与等の贈与財産※2-相続開始時の相続債務※3

  1. 積極財産:価値のある財産のことで預貯金や株式、有価証券や不動産など
  2. 贈与財産:相続開始前1年間にされた贈与、1年以上前でも遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与、死因贈与、相続開始前10年以内の特別受益に該当する贈与。ちなみに過去の贈与は相続開始時を基準として評価します。
  3. 相続債務:マイナスの財産ともいうべき負債(被相続人本人の借金だけでなく、被相続人が連帯保証している連帯保証債務なども含みます)のこと

遺留分の割合の算定

次に遺留分割合(いりゅうぶんわりあい)を算定します。

先に「遺留分の割合」のところで解説した通りです。

たとえば相続人が配偶者と子2人の場合、遺留分割合は配偶者が4分の1、子2人は8分の1ずつになります。

遺留分額の算定

各相続人の遺留分額は、遺留分基礎財産×遺留分割合となります。

【具体例】

  • 遺留分基礎財産が4千万円
  • 相続人が配偶者と子2人の場合

このときの遺留分額は以下の通りです。

相続人 遺留分
配偶者 4千万円(遺留分基礎財産)×4分の1(遺留分割合)=1千万円
4千万円(遺留分基礎財産)×8分の1(遺留分割合)=一人500万円ずつ

遺留分侵害額の算定

実際に遺産としてもらった金額が上記で算出した遺留分額より少なければ、その金額が遺留分の侵害された額となります。

【具体例】

  • 遺留分基礎財産が4千万円
  • 相続人が配偶者と子2人
  • 子1人が実際にもらった遺産額が300万円
  • 配偶者が実際にもらった遺産額が1000万

この場合、

  • 300万もらった子の遺留分侵害額は
    500万円(遺留分額)-300万円(実際にもらった遺産額)=200万円(遺留分侵害額)となり、200万が遺留分侵害額となります。
  • 1000万もらった配偶者の遺留分侵害額は
    1000万(遺留分額)-1000万円(実際にもらった遺産額)=0円(遺留分侵害額)となり、遺留分侵害額はないことになります。

遺留分侵害額は、正確には下記の算式で求めます。

遺留分額-遺留分権者が相続で取得した金額-遺留分権利者が相続によって負担すべき債務額-遺留分権利者の特別受益額及び遺留分権利者が受けた遺贈額

この計算により遺留分が侵害されていた場合には、遺留分侵害額請求をおこなって侵害された分を金銭的に取り戻すことができます。

まとめ

遺留分は法律で認められた正当な権利です。

次男だから、家から出た娘だからといってあきらめる必要はありません。

すこしでも疑問があれば、相続問題を数多く解決してきた当事務所へのご相談をお勧めします。

当事務所は相続問題に詳しい男女合計4人の弁護士が、チームとなって相続問題に取り組みます。

相続人の無知につけこんだり長年の慣習を理由にしたりして、遺産を独り占めしようとするケースはまだまだ多いのが実情です。

相続問題での豊富な経験を踏まえた交渉で、あなたの相続問題を解決します。

気軽に相談していただけるよう、夜9時まで電話を受け付けています。

またわかりやすく費用を設定しており、支払い方法も個々の状況に合わせ柔軟に対応します。

初回相談は60分まで無料ですので、どうぞ気軽に当事務所までご相談ください。

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