再婚相手の連れ子に相続させるには生前の対策が重要

代表弁護士 関口 久美子 (せきぐち くみこ)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号43125)
保有資格 / 弁護士

日本でも3組に1組が離婚をするといわれていますが、離婚され、その後既に子供のいるパートナーと再婚して新たに家庭を築く方も多くいらっしゃいます。

再婚相手の連れ子は、当然には遺産相続権をもたないので、ご自身の財産を相続させたいと希望する場合には、生前に対策をしておく必要があります。

この記事では、再婚相手の連れ子に相続させる方法についてご説明します。

再婚相手の連れ子は相続人ではない

民法では、法定相続人の範囲を定めています。被相続人に配偶者と子がいる場合は配偶者と子が法定相続人となります。

再婚した相手は配偶者となるので相続権をもちますが、再婚相手の子は、被相続人と別途養子縁組をしていない限り、被相続人と法律上の親子関係にはないので、相続権はありません。

なお、被相続人と離婚した前の配偶者との間に実子がいる場合、離婚によっても子との親子関係は変更されないので、その実子は相続人となります。

ちなみに、離婚した元配偶者は離婚によって配偶者ではなくなるので、相続権がなくなります。婚姻によって法的な夫婦関係は変更されるけれど、それによって当然に法的な親子関係が変更されるわけではないということを留意しておきましょう。

相続させる方法

再婚相手の連れ子に相続させる方法

それでは、再婚相手の連れ子に相続をさせたい場合は、どうすればよいのでしょうか。

法定相続人の範囲は上に述べたとおりですが、実生活としては、再婚相手とその子供と長年生活をともにして、再婚相手の連れ子を実子のように近しい相手と感じているケースも多くあることでしょう。こうした場合に再婚相手の連れ子に相続をさせる方法として、以下のようなものがあります。

再婚相手の連れ子と養子縁組をする

再婚相手の連れ子と養子縁組をすると、法律上の親子関係が成立しますので、実子と同様法定相続人とすることができます。法定相続分は、実子と同様になります。

例えば、ご本人が亡くなり、相続人として配偶者、実子、連れ子である養子が残された場合、配偶者の法定相続分は1/2、実子と養子の法定相続分はそれぞれ1/4ずつとなります。

養子縁組の方法は、特別養子縁組といって、6歳未満の子供について、実の親との法的な親子関係を終了させたうえで養親である親と法的な親子関係を結ぶ方法と、実の親との法的な親子関係は存続させたまま養子縁組関係を結ぶ通常の養子縁組の2種類があります。

特別養子縁組については、家庭裁判所での手続きが必要となりますが、通常の養子縁組の場合は、当事者の手続きのみによって行うことができます。

手続きは、養親になる人と養子になる人が、共同して市区町村の役所に届け出を行います。届出に際しては、2名の成人の証人に署名をもらっておきます。

なお、養子となる人が15歳未満の場合、その親権者(この記事のケースでは、再婚した配偶者であり養子の実親)が養子本人の代理として届け出を行います。

通常の養子縁組の場合、実の親との親子関係も存続するので、連れ子は実の親からも養親からも相続を受けることができます。

遺言を遺す

遺言を遺してその中で養子に相続させる旨を定めることで、養子に財産を残すことができます。

ただし、この際には、他の法定相続人の遺留分を侵害しないように留意する必要があります。遺留分とは、遺言によってもおかすことができない、配偶者、子供、直系尊属という一定の範囲の相続人に民法上認められた法定の取り分のことをいいます。

遺留分を侵害する形で養子に財産を相続させてしまうと、侵害された人から遺留分を請求され、法的なトラブルとなってしまう可能性があるからです。

なお、養子も相続においては実子と同様、子供として取り扱われるため、養子縁組をした以上、逆に養子の遺留分を侵害しないように遺言を遺すということも必要です。

なお、養子縁組をせずに再婚相手の連れ子に遺言を遺す際の注意点としては、相続税が高くなってしまうことがあります。被相続人の配偶者と1親等の血族以外の方が遺産を相続する際には、相続税が2割加算されてしまいます。

なお、養子縁組をしている場合は、養子は法律上の子として、被相続人の1親等の血族となりますので、こうした相続税の加算はされません。

生前贈与する

生前に連れ子に一定の財産を贈与しておくという方法もあります。

例えば、特定の不動産や預金などの財産を譲るような方法が考えられます。贈与は財産を譲る人と譲り受ける人の合意により行うことができます。

留意点としては、一定の金額を超えると贈与税が課税されることです。贈与税については、基礎控除といって、1年間に110万円以内の贈与であれば課税されないという制度がありますので、何年かかけて計画的に生前贈与していくという方法があります。

相続について

特別寄与料が認められる場合

上述のように、再婚相手の連れ子に遺産を譲るためには、養子縁組、遺言、生前贈与といった生前の対策が必要となるのが基本です。

しかし、2019年7月1日の民法改正により、このような対策がされていない場合であっても、一定の条件の下、再婚相手の連れ子が遺産相続できるケースが生じるようになりました。

相続人ではない親族が、無償で被相続人の介護等をしていた場合は、その貢献に報いる趣旨で、遺産分割時に、相続人に対して特別寄与料を支払うよう求めることができるようになりました。

特別寄与料を請求しうる親族には、子供の配偶者や再婚相手の連れ子も含まれるため、こうした事情がある場合は、相続ができる可能性があります。

しかし、特別寄与料が認められるか、特別寄与料の算定をめぐって、連れ子と他の相続人との間で交渉が難航することもありえるので、こうした場合でも、本記事でご説明した生前の対策をとっておいたほうが安心といえるでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

再婚相手の連れ子に相続させる方法についてご参考になれば幸いです。まとめると、再婚しただけでは、原則再婚相手の連れ子に法律上の相続分は発生しないので、財産を継がせたい場合は、養子縁組、遺言、生前贈与といった対策を取る必要があります。

それぞれの方法について法律上や税務上のメリット・デメリットがありますので、どの対策がよいか悩んだ場合は弁護士等の専門家に相談してみましょう。

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