遺留分のない兄弟姉妹が相続権を主張することはできる?

弁護士 関口 久美子 (せきぐち くみこ)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号43125)
保有資格 / 弁護士

被相続人の兄弟姉妹は第三順位の法定相続人ではありますが、被相続人が遺言で兄弟姉妹を受遺者としない内容の相続を決めた場合であっても、遺留分侵害額請求をすることは認められていません。

なぜ兄弟姉妹には遺留分が認められていないのでしょうか。

また、遺留分がない兄弟姉妹が相続権を主張する方法はあるのでしょうか。

兄弟姉妹の相続と遺留分

兄弟姉妹は第三順位の法定相続人

兄弟姉妹は民法上相続順位が認められており相続をする場合もあります。

具体的には、相続が発生すると、被相続人の配偶者は常に相続人となります。配偶者とともに相続する人として、被相続人の子が第一順位、親や祖父母といった直系尊属が第二順位、兄弟姉妹が第三順位の相続人となります。

したがって、第一順位、第二順位の相続人がひとりも存在しない場合に、兄弟姉妹は相続をすることとなります。

兄弟姉妹には遺留分はない

上述のように、兄弟姉妹は相続人となることはありますが、その相続分が侵害された場合であっても遺留分は認められていません。

民法第1042条は、「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一」と定めており、法定相続人の中で第三順位の兄弟姉妹は遺留分権者とならないことを規定しています。

なお、遺留分とは、法律上認められた最低限の相続人の相続分となります。

被相続人が遺留分を侵害する内容の遺言を遺した場合、遺留分権者である相続人は遺留分侵害額請求をすることによって遺留分を取り戻すことができます。

例えば、愛人に全ての財産を譲るという遺言が残された場合であっても、配偶者と子が相続人として残されていた場合、遺留分として法定相続分のそれぞれの1/2については請求することができます。

しかしながら、兄弟姉妹には遺留分はないので、遺言内容や生前贈与に不満があっても、遺留分を主張することはできません。

兄弟姉妹に遺留分がないのはなぜ

それでは、なぜ兄弟姉妹には遺留分が認められていないのでしょうか。

兄弟姉妹は比較的被相続人との関係が遠い

他の相続人である配偶者や1親等の血族である子や親と比べると、兄弟姉妹は2親等の血族となるので、被相続人との関係は遠くなります。法定相続人の順位をみても、民法は近い親族順に相続順位を認めています。

これは、財産を残す人の通常の意思としては、より近い親族に財産を残したいはずという想定で法律が設計されているからです。

よって、もともと相続順位が第3位である兄弟姉妹に対しては、遺留分という最低限の相続分を確保する必要性は低いと考えられています。

また、現実の生活を考えても、成人した兄弟姉妹は、被相続人と別の世帯や生活基盤を持っていることが通常です。

したがって、被相続人の財産を相続できなかったとしても、兄弟姉妹の世帯がそれにより生活が困窮するような事態はあまり発生しないといえます。

遺留分は相続人の生活保障という側面も考慮した制度であるため、兄弟姉妹にはこれを認めなかったともいわれています。

代襲相続制度とのバランス

兄弟姉妹には遺留分がないもう一つの理由として、兄弟姉妹の子には代襲相続が認められているからということもあります。

代襲相続とは、相続人となるべき被相続人の子か兄弟姉妹が、相続開始時に既に死亡している場合、相続欠格や相続廃除により相続権を喪失していた場合に、被相続人の子か兄弟姉妹の代わりに、その子が相続をする制度です。​

つまり、相続人が①配偶者+兄弟姉妹または②兄弟姉妹のみの場合で、兄弟姉妹が相続開始時に被相続人より先に死亡しているようなケースでは、甥や姪が代襲相続をします。

そのため、兄弟姉妹に遺留分を認めると、代襲相続がおきたときに甥や姪にも遺留分が発生することとなります。

被相続人からみると、甥や姪は、兄弟姉妹よりもさらに血縁関係としては遠くなります。それを踏まえると、被相続人があえて遺言書を残して実現しようとした相続が、甥や姪が遺留分を主張することで一部否定するのは、被相続人にとって酷であるという理由から、兄弟姉妹には遺留分を与えなかったとされています。

兄弟姉妹が相続権を主張する方法は?

それでは、兄弟姉妹が相続権を主張する方法や対策はあるのでしょうか。

生前に被相続人とコミュニケーションをとる

兄弟姉妹である被相続人と良い関係であり、被相続人が兄弟姉妹に遺産を特に相続させたいというような事情があるのであれば、被相続人が健康で意思能力が十分なときに、よく話し合っておくことがベストです。

被相続人が遺言書を残す場合には、遺留分がない兄弟姉妹にも遺産を与えるような内容である必要があります。また、相続ではなく、生命保険金の受取人として受領するような方法もあります(生命保険金については法律上は遺産とは扱われず、受取人固有の権利として受領ができます)。

遺言書の無効を主張する

遺言書が残されている場合で、兄弟姉妹が相続できない内容である場合、兄弟姉妹として相続を主張したい場合にはその遺言の無効を主張できる可能性があるか検討してみましょう。

例えば、自筆証書遺言の場合には遺言書が法定の様式に沿って作成されていない、遺言書が事後的に偽造・変造されている、公正証書遺言を含めた遺言書作成時には被相続人の認知症が進行していて事理弁識能力がなかった、等の場合があります。

寄与分を主張する

兄弟姉妹も寄与分の主張をすることができます。

寄与分とは、相続人の中で、被相続人の療養介護を行うなど相続財産の維持または増加に特別に貢献した人については、法定相続分にその寄与分を加味した財産を相続することができる制度です。

ただし、被相続人の生前に入所施設へ見舞に行っていた程度の貢献では寄与分が発生するとはいえず、注意が必要です。

ただし、遺言書の内容と寄与分が抵触する場合は、遺言書の定めが優先されます。

最後に

いかがでしたでしょうか。

兄弟姉妹には遺留分が認められないこととその理由、兄弟姉妹が相続権を主張する方法などについてご説明しました。ご参考になれば幸いです。

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