相談先 弁護士・税理士・司法書士の使い分け方
遺産相続をする際には、法的な問題、相続税等の問題、不動産登記の問題など専門家の力を借りたほうがスムーズな問題が多く発生します。
それでは、それぞれの専門家はどのような分野を得意としていて、どのような使い分けで相談すれば良いのでしょうか。
この記事では、相続にあたっての相談先である弁護士、税理士、司法書士の使い分け方についてご説明します。
専門家への相談にあたって
国家資格を有する専門家は、その資格の根拠法令などによって対応できる専門分野が決まっています。
そのため、まずご自身が相談したいと思っている内容の洗い出しをして、その内容ごとに対応する分野の専門家への相談を検討するという方法がスムーズでしょう。相続手続きには期限が決まっているものもありますので、効率的に専門家の協力を得てすすめていくことがおすすめです。
弁護士への相談
弁護士に相談できる内容としては、相続に関する法的な問題や手続きすべてとなります。特に、複数の相続人がいて争いごとが発生しそうな事情があったり、遺言によって相続人の遺留分が害されていたりなど相続にあたって紛争が発生しそうな場合は、弁護士に相談する必要があります。
弁護士に早期に相談しておけば、話し合いで解決できず、遺産分割調停、審判、訴訟など法的手続きに移行した場合もスムーズです。
また、親族間で直接口論することを避けたいと思っている場合も、第三者である弁護士に入ってもらうことにより、スムーズに協議ができるでしょう。弁護士法により紛争案件の場合は他の士業では代理人になれないので、法的紛争が発生する場合は弁護士への相談がおすすめです。
もちろん、紛争案件でなくても、紛争を未然に防ぐ対策、例えば揉めにくい遺言書の作成相談や成年後見制度、家族信託制度に関する相談なども相談可能です。
司法書士への相談
司法書士も弁護士と同様、法律系の国家資格ですが、専門が不動産登記であることと、紛争対応など対応できない法的分野があることに違いがあります。
不動産登記の専門家
相続にあたっては、不動産の権利移転が発生することも多いです。被相続人の方が自宅やその他賃貸用不動産などをお持ちの場合、それらは相続財産に含まれます。国税庁の調べでは、相続財産のうち約4割は土地であるといわれています。
また、相続のうち50%については不動産相続が含まれるといわれていますので、相続にあたっての大きなトピックであるといえるでしょう。
不動産が相続により相続人に引き継がれ、権利変動する場合、不動産登記をする必要があります。不動産登記をしておかなければ、土地について二重に譲渡されているような場合に自分の権利を対抗できなくなってしまうので、不動産登記は不動産の権利を守るのにあたって非常に重要です。
そのため、不動産の相続が発生した場合は、司法書士に相談することがおすすめです。
司法書士は登記実務を得意分野とする国家法律資格ですので、相続人の方に変わり不動産登記業務を代行してくれます。
その他の法的書類の作成代行
司法書士は不動産登記実務のほか、相続にあたって裁判所に提出するべき各種書類の作成も代行することができます。
例えば、遺言がある場合の検認手続き、遺言執行者選任申立や、相続を放棄する場合の手続き、不在者財産管理人選任申立などの手続きについて書面を作成することができます。
ただし上述の弁護士法の制限により、相続人同士で紛争状態がある場合、司法書士には紛争解決についての代理権限はありません。そのような場合には、弁護士に相談する必要があります。弁護士はあらゆる法的手続きについて代理人となることができますので、このような書類の作成手続なども代行できます。
一般的には弁護士のほうが司法書士よりも報酬が高い傾向がありますので、弁護士を選ぶか司法書士を選ぶかは、紛争性の有無が一つのメルクマールになるでしょう。
税理士への相談
一定の相続額があり、相続税納付が必要な場合の相談先は税理士となります。
相続税は、3,000万円+(相続人の人数)×600万円という基礎控除を超えた額について課税されます。2020年の国税庁発表資料では、相続税が発生する割合は、全相続の7%程度ですので、該当する人は多いというわけではありません。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっていますので注意が必要です。相続税の計算にあたっては、相続財産の洗い出し、評価、相続税に関する特例の適用の確認などの専門知識が必要となります。
また、納付期限も定められていることから、相続税が発生する場合は、相続税申告業務について税理士に相談した方が良いでしょう。税理士報酬の目安は、遺産総額の0.5~1.0%程度です。
ただし事務所によっても違いがありますので、依頼前に必ず見積をとりましょう。
専門家の探し方
上に述べてきた事項が、専門家ごとの相談するべき事項となります。
なお、各専門家に相談する際には、必ず相続問題に詳しく経験がある専門家を選びましょう。
例えば、一口に弁護士といっても、交通事故を得意としている事務所、離婚を得意としている事務所、企業法務を得意としている事務所など様々な得意分野があります。相続に関しては、相続の取扱件数が多くノウハウがある事務所を選ぶことが得策です。
また、専門家同士でネットワークを持っていることも多いですので、例えば弁護士に相談をして、その協力先の税理士を紹介してもらうなどの方法もあります。このような方法であれば、よりスムーズに各専門家が連携して手続きを進めてくれることが期待できます。
例えば、正確な相続税額の計算は遺産分割協議が整わないとできないため、遺産分割協議を法律の専門家に、相続税については税理士に並行して相談していくようなプロセスが考えられます。
最後に
いかがでしたでしょうか。
相続の代表的な相談先である専門家である弁護士、税理士、司法書士について、それぞれの専門家が扱える分野を踏まえた使い分け方等についてご説明しました。ご参考になれば幸いです。