非協力的な相続人との対話を通じて遺産分割審判手続きを経て有益な遺産分割が実現した事例
- 亡くなられた方
- 義母
- 相続人
- 養子(依頼者)、四男、三男の子(代襲相続人)
- 相続(遺産)
- 不動産、預貯金
亡くなられた方
この事例の中心となるのは、亡くなった義母です。依頼者は、生前に妻と共に義母の世話を行い、妻が亡くなった後も義母と同居して献身的に世話を続けてきたそうです。このような依頼者の献身的な行動が、後の遺産分割問題に大きな影響を与えることになります。相続人
相続人は、養子(依頼者)、四男、三男の子(代襲相続人)の3人でした。代襲相続人とは、相続人が亡くなった場合に、その相続人の子供が相続権を引き継ぐことを指します。この事例では、三男が既に亡くなっていたため、その子供が代襲相続人となったのです。相続(遺産)
相続の対象となる遺産は、不動産と預貯金でした。特に、義母名義の自宅をめぐっては、依頼者と代襲相続人との間で利害関係が対立することになります。ご依頼の背景
依頼者は、義母が亡くなった後、義母名義の自宅に住むことを希望していました。そのために、他の相続人に連絡を取ったそうです。
しかし、疎遠だった三男の子(代襲相続人)が非協力的であり、交渉は難航してしまいました。代襲相続人との関係性の悪さが、遺産分割を困難にする要因となったのです。
そこで、依頼者は弁護士に助けを求めることになりました。
依頼者の主張は明確でした。故人の生前、代襲相続人と交流がなかったにもかかわらず、非協力的な態度を取られることや、そのまま持ち分を主張されることが納得できないというものです。
依頼者の心情は理解できるものでしょう。義母の世話を献身的に行ってきた依頼者にとって、突然現れた代襲相続人の非協力的な態度は受け入れがたいものだったのでしょう。
このような依頼者の主張を踏まえ、弁護士は遺産分割交渉に臨むことになります。
弁護士は、まず協力的な相続人である四男に連絡を取り、協力を求めました。その結果、相続分譲渡証書を取得することができました。相続分譲渡とは、相続人が自分の相続分を他の相続人に譲渡することを指します。
一方、非協力的だった代襲相続人には、郵送や電話で連絡を試みましたが、拒否され続けました。代襲相続人の非協力的な態度は、遺産分割を大きく阻害する要因となったのです。
このような状況下で、弁護士は家庭裁判所による遺産分割調停の申立を迅速に行いました。調停とは、家庭裁判所の調停委員が間に入って、当事者同士の話し合いを促進し、合意の成立を目指す手続きです。
調停手続きの結果、相続分譲渡を行った四男には、手続きの途中で脱退してもらうことになりました。家庭裁判所で正式に脱退の手続きが行われたのです。
一方、代襲相続人は調停手続きに参加しなかったため、審判に移行することになりました。審判とは、家庭裁判所の裁判官が、調停で合意に至らなかった事項について、裁判所の判断で決定を下す手続きです。
審判書が届いた後、代襲相続人が初めて協議に応じ、弁護士を代理人に付けました。法律の専門家が介入したことで、ようやく建設的な議論が可能になったのでしょう。
その結果、代理人同士で交渉が行われ、自宅の不動産と預金・貯金を全て依頼者が取得し、低額な解決金を代襲相続人に支払うことで、和解が成立しました。
この事例から学ぶべきことは、遺産分割問題においては、相続人間の対話が重要だということです。今回は、非協力的な相続人の存在が問題を複雑にしましたが、弁護士の助言を得ながら、粘り強く対話を続けることで、最終的には有益な遺産分割が実現したのです。
遺産分割問題は、法律的にも感情的にも複雑なものです。相続人間の関係性によっては、対立が深刻化することもあるでしょう。しかし、専門家の力を借りながら、対話を続けることが問題解決の鍵となります。
また、調停や審判といった家庭裁判所の制度を活用することも有効です。これらの制度は、当事者間の合意形成を促進し、公平な解決を導く上で重要な役割を果たします。
遺産分割問題に直面した際は、一人で抱え込まずに、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な助言を得ながら、相続人間の対話を続けることで、たとえ難しい問題でも解決への道が開けるはずです。
遺産相続は、法律だけでなく、家族の感情も絡む複雑な問題です。しかし、対話を重ね、時には法的な手続きも활用しながら、一歩一歩前に進んでいくことが大切なのではないでしょうか。そうすることで、今回の事例のように、有益な遺産分割が実現できるはずです。
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